キラーハウス狂騒曲 第57話 黒原虹華のみっくすぶらっど

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というわけで、火曜日なのでキラーハウスの更新でっす。
自分が関わった本が仕上がってくると、ものっすごいテンション上がるんですよね。今週のはそんな感じのお話です。
ほかに何か書こうと思ったことがあった気がしますが、忘れたのでとりあえず置いときます。

気温も上がってきて、春っぽい気候ですねぇ。ちょいちょい寒い日もありますが、今日なんかは最高で20℃まで上がったんだとか。さすがに上着は一段薄いやつにしました。
その他特に面白いこともなく……しいて言うなら「ハハハこやつめどうしてくれようか」って案件は一つないでもないですが、さすがにブログに乗せるような内容でもないのでやめときましょう。

さてさて、では以下Moreより本編開始。
お楽しみいただければ幸いです。










「二学期も終了かぁー……」
 机に突っ伏しながら、誰にともなく私は呟いた。
 終業式を終え、HRも終わり、あとは家に帰るだけ、というこの状況。部活が違うなどで冬休み中に会う予定のない奴らは、また来年、などと言い合って別れていく。私にはそんな相手もいないけれど。ぼけーっと、人が減っていくのを待っていた。
 待っているのは人が減ることだけではないけれど。
「じゃあまたねー、霧ちゃん!」
「うん、よいお年をー」
「白砂―、じゃあなー」
「ばいばーい」
 ――私の待ち人である霧は、こういう時は忙しい。男女問わずに知り合いが多いので、大体取り囲まれるのだ。
 そういえば始業式の時もこんなだったな、と視線を外へと向けてみる。青々としていた校庭の木は寒さに負けて葉っぱを散らし、見るも無残な丸坊主だ。おまけに雪までちらついている――この三か月ほど、あっという間だったなぁ、と振り返って思う。
 こんなに全力で駆け抜けたのは、人生初めてかもしれない。
 そう思うと、急にそわそわしてしまう――この後に控えている用事のことを考えてしまったからだ。
 しかし霧を置いて行くのもちょっとためらわれる。仕方がないので、始業式のように眠って待つか――と思ったのも束の間。
「ねぇキリ、今日このあとカフェでも行かない?」
「ごめん、もう予定入っちゃってるから、今日はもう行くよ」
 クラスメイトからの誘いをさくっと断った霧は、鞄を抱えて私の傍までやってくる。
「虹華、まだ起きてるでしょ? 行くよ」
「…………。……ん、了解」
 私も自分の鞄を持って立ち上がる。霧に先駆けて、私はやや早足で教室を出た――少なからず向けられていた、クラスメイトの意外そうな視線から逃げるように。
「――ちょっと虹華、早くない?」
 後ろから追いつき、隣に並んだ霧が若干非難するように言う。
「早くもなるって……ああいう視線、私あんま好きじゃないし」
「……まずかった? 話しかけたの」
「そこまでは言わない――でも、別にみんな帰るまで待っててもよかったんだけど?」
「それだと際限なくなっちゃうからね。それにさ」
「それに?」
 こっちの心を見透かしたように、霧はにっこりと笑った。
「虹華、今日は早く集会所に行きたいかなって思ってさ」
「……それはまぁ、そうだけど」
 私のためにクラスメイトとの会話を早く切り上げたのかと思うと、嬉しくもあり申し訳なくも思う。比率としては6:4だ。
 足早になってしまったのは、決して視線から逃げたかったからという理由だけではない。
「だって、そりゃ――気になるでしょ。自分の関わった本が刷り上ってるって連絡きたんだから」

「――おっ、来たな? 待ってたぜ、お前ら!」
 私と霧が『キラーハウス』の集会所に到着すると、既に私たち以外の四人のメンバーが揃っていた。
 夕くん、ときわさん、中峯さん――そしてヘッドが囲んでいるのは、まだ封の開いてない段ボール。
「わざわざ待ってなくても、先に開けててよかったんですけど」
「いやいや、開けるときは全員揃ってからってルールがあってな。まぁそうでなくても、今回の二大功労者である夕と黒原を差し置いて中身を確認しようなんてさすがに悪いだろ」
「そういうものですかね……でも、ありがとうございます」
 言いながら、私は鞄を放り投げるように置き、四人の輪に加わって――夕くんの隣に座って、段ボールを囲む。
「お疲れ様です、虹華さん」
「うん、お疲れ様――夕くん、めっちゃうずうずしてるね?」
「わ、分かりますか?」
「さっきから小刻みに揺れてるから」
「えっ、うそ」
「自覚なかったんだ……」
 指摘されて頬を赤く染める姿は微笑ましいが、気持ちは分からないでもないので微笑むに留めた。刷り上った同人誌を前にして確認もできずにいるなんて、目の前に垂涎もののご飯があるというのに、お預けを喰らう犬のような気分だろう。待たせてごめんね!
「さぁて、それじゃ役者も揃ったことだし――御開帳と行きますか。なにより、これ以上待たせちゃ夕が飛びかかりかねないからな。隼太郎」
「了解です」
 ヘッドの言葉を受けて、中峯さんがカッターを取り出し、段ボールの封をしているガムテープを切っていく。
 ……なんか、私までドキドキしてきた。ごくり、という息を呑む音は隣から。
 視線の集中する中、中峯さんが、段ボールを開く。

 ――表紙のヒロインと、目が合った。
 
「「「おお〰〰〰〰〰っ!!」」」
 部屋の中に、段ボールをのぞき込んだメンバーの歓声が響く。
「はいはい、一冊ずつ配ってくからとりあえず見といてくれな」
 中峯さんが梱包用のビニール袋の中から同人誌を取り出して、私たちにひょいひょいと渡していく。
「……うわぁぁぁ……マジで本になってやんの」
 しかも、意外と分厚い。一般的な同人誌に比べて2倍――下手すれば3倍にも届きそうな分厚さだ。これもう同人誌っていうか総集編ぐらいの分厚さ……いやまぁ、中身のことを考えたらある意味総集編でもあるんだけど。
 刷り上がったばかりの本の匂いを感じながら、改めて表紙を見る。
『みっくすぶらっど!!』と派手な色で印字されているタイトルの下、ど真ん中には大本となった作品、『ブラッディ・フール』の巨乳サブヒロインであるサラサが、胸を強調した立ち絵で恥ずかしそうな顔をしていた。その周りに、今回同人誌の中に登場しているメインヒロインやサブヒロインが、デフォルメされたデザインで浮かんでいる。
 タイトルに関しては、当初は『ミックスブラッド』とカタカナ表記にするか、『MIX BLOOD』と英語表記にするかの話し合いで多少揉めたのだけれど、萌え寄りの話、いちゃつき系の話が多いことから、緊迫感の抜けるひらがな表記がいいのではないかという結論になったのだ。
「結局、登場キャラは全員表紙に出す方向性にしたんですね?」
「この方がコンセプトも分かりやすいかと思ってさ」
 中峯さんが頷きながら言う。
「サラサは夕に、デフォルメキャラはときわにやってもらったけど、うまく合わせられてよかったよ」
「ときわさんのデフォルメキャラ、可愛いですもんね」
「えへへ~、照れちゃうなぁ~」
 まんざらでもなさそうな緩み顔で、ときわさんがくねくねしていた。珍しいな。
「どれどれ、中身の出来は――」
 表紙裏はサークルの名前とタイトルの名前。隣の一ページ目には『この本は、それぞれの登場ヒロインが主人公といちゃついたり仲良くしたりするifルート本です』というコンセプト説明と、目次が分かりやすく描かれている。
 一通り眺めてから、一番最初の話であるサラサのストーリーを読み始めた。
「…………」
 無言で、目の前のイラストに、セリフに、没頭する。
 黙ってページをめくって、読んで、まためくって。
 ――なんだろう、この気持ち。
 自分がストーリー作ったはずなのに、先の展開だって全部知ってるはずなのに。
 まるでこの話を初めて読むような、そんな気持ちだった。
 最後まで読み終えて、ふぅ、と一息つく。
「……感想は?」
 にやにやしながら、ヘッドが私に訊ねてくる。
「……ちょっと、感動しました」
 これは嘘偽りない気持ちだ。同人誌とはいえ、本を作るという作業に――その根幹に限りなく近い部分に関わるなんて一年前には夢にも思っていなかったし、実際こうして形になったものを見ると、さすがの私も多少、こみ上げてくるものはある。
 ただ――
「……まぁ、嬉しくはありますけど、ちょっと恥ずかしいですね」
 借り物のキャラクターであるとはいえ、自分の書いたセリフがそのまま使われているのだから。私の答えを聞き、ヘッドが――というか、その場の誰もが、にんまりとしていた。
「でも、悪くないだろ?」
「……ですね。夕くんはどう思――うわっ」
 隣の夕くんはどんな反応を示しているかと思って顔を向けると、だばっだばに涙を流していた。びっくりした。
「ど、どうしたの!? この話、別に感動するようなのはなかったはずだよ!?」
「い、いえ……ちゃんと仕上がって……よがっだなと、思っで……」
「ほ、ほんとにお疲れ様……」
「――さて、じゃあ迷惑かけた俺が言うのもなんだが、まだ終わっちゃいないんだよなぁ」
 ヘッドが柏手を一つ打ち、メンバー全員の顔を見回してから言う。

「向こうに勝たにゃぁ俺たちのサークルに来年はない。そこで当日の動きをこれから確認するぞ」

                   (続く)
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by akr-hgrs | 2018-03-13 18:36 | Comments(0)

物書きの蝉、もとい物書きの日暮晶が綴る、雑な日記のようなもの(予定) ご連絡等ございましたら q65e3r@hotmail.co.jp までどうぞ
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