キラーハウス狂騒曲 番外編 黒原虹華のハロウィン

登場人物紹介

○黒原 虹華(くろはら にじか)
 語り部。超ひねくれ者の女子高生。友達ほとんどいない。男ながら女子のように可愛い夕がお気に入りのハロウィン否定派。

○白砂 霧(しろすな きり)
 虹華のクラスメイトで数少ない親友。友達多く、社交的な女子高生。ハロウィン中立派。

○小野木 夕(おのぎ ゆう)
 虹華や霧と同じ同人誌サークルに所属する、女子と見紛うほど線が細く中性的で小柄な男子高校生。ハロウィン楽しめる派。


せっかく更新日がハロウィンなので、キラーハウス狂騒曲のハロウィンネタを書いてみました。
作中時系列的にはちょっと前後する気がしますが(確か今十月中旬だったはず)、こんなおいしい機会を逃すのもあれなので、勢いで書いちゃいました。製作期間二日の突貫工事ですが。

キラーハウスとか何それ読んでねーよって方のために、上に簡単なキャラ紹介も載せておきました。出てくるのは上記三人だけですし、この話は特にキラーハウスの本編にはあまり関係のない話に仕上げてあるので、初見の方でも問題ないと思います。もし興味があったら読んでいただけると嬉しいです。

のっけから虹華がハロウィン批判してますが、どっちかって言うと自分はどうでもいいかな派です。楽しみたい人は楽しんでればいいですし。まぁソシャゲではハロウィンの恩恵が少なからずありますからね! おもに可愛い衣装の女の子とか! ……なんか以前にもこんなことを言ってた記憶が……。
ともあれ、アズレンでは先週から、白猫黒猫では今日からハロウィンイベントやってますし、色々うはうはですね。目と手が足りないよう!

さて、ではいつものように、以下Moreより番外編開始。
お楽しみいただければ幸いです。

あ、夜には本編の方……次は38話でしたかね。そっちも更新しますのでー。











「外国の祭事を取り上げては大騒ぎに持っていく風潮は、正直どうかと思うのよ」
「虹華っていっつもそういうこと言ってるよね。ひねくれ者のテンプレすぎて、一周回って普通の意見だと思うよ?」
 隣を歩く霧が私に、呆れたように口にするが、言わずにはいられないだろう。
 今日は10月31日――俗にいう、ハロウィンである。
 私たちは学校終わりに集会所へ向かうべく、いま歩いているところだ――どちらかと言えば田舎寄りの住宅街であるこのあたりは静かなものだけど、テレビなどで見る都会、特に渋谷なんかは馬鹿騒ぎもいいところである。
「まぁ、騒ぐのは仕方ないんじゃない? だってどっちかっていうと煽ってるのは企業側じゃない」
「煽られるままに流されるバカどもにも問題はあると思うんですけど。大体企業の思う壺になってて、楽しいのかしら、ああいうことしてる奴らって」
「辛辣だなぁ……誰かの思惑だとしても、楽しいんならいいんじゃない?」
「ふん……あんなの、ハロウィンじゃなくてただのコスプレ大会じゃない」
 そもそも、ハロウィンというのは秋の収穫を祝ったり、村の悪霊を追い払うための祭事であったはずだ。
 子供が仮装するのもあくまでお化けで、間違ってもアニメのコスプレをするものじゃない。大本の国に馬鹿にされるぞ。
「大体、あんなの体のいい街コンじゃない。派手な仮装で相手の興味を引こうとするなんて、お前らは発情期のクジャクかっつーの。ハッピーハロウィンとかいうけど、何がハッピーなんだかわかりゃしないし」
「……虹華って……というより、虹華みたいにハロウィンとか、イースターとかに対して、ひねくれた事言う人たちってさ」
「ん?」
「毎回毎回、何がそんなに気に食わないんだろうって思ってたんだけど……」
「……だけど?」
「…………」
「ちょっと霧、何その間」
「あー、うん、言ってもいいものなのかなってちょっと悩んじゃって」
「今更変な気回すんじゃないわよ。何?」
「んー……んじゃ言うけどさ」
 視線を遠くへ飛ばしながら、霧は言い淀んでいた口を開いた。

「単にそれに絡めないのが寂しいだけだったりするの?」

「霧、貴様は今全世界のひねくれ者を敵に回した」
 ごきり、と手を鳴らしながら戦闘態勢へ入る私に、霧はいっそ憐れむような目を向けてきた。
「あのさ……自分が関われないからって批判するのは正直どうかと思うんだけど。っていうか、逆上するってことは図星ってことじゃない」
「別に寂しいわけじゃないし。祭りを批判してるわけでもないし。私が批判してんのは流されるままに馬鹿騒ぎでき……馬鹿騒ぎする連中だけだし」
「できるって言いかけたじゃん。やっぱやりたいんじゃん」
「見くびらないでくれる? 今ハロウィンのイベントに乗っかっちゃったら結局私も流されて負けたみたいな気分になるじゃない」
「だとしたら四面楚歌以上に八方塞がりの敗北必死だよ虹華……そんな『イベントに流されない私かっこいい』みたいなこと言ってて恥ずかしくない?」
「流されるよりは、マシかな」
「ひねくれ者もここまで筋が通ってると見事だなぁ……ちなみに、虹華的にクリスマスとかってどうなの? あれだって元は宗教上の祭事でしょ?」
「クリスマスだぁ?」
 その単語を耳にした私は、急速に心が冷え込んでいった。
「リア充カップルどもを十字架に表裏で張り付けて、火をくべればいいと思います」
「爆発より物騒!」
「……まあ、ここぞとばかりにいちゃつくカップルどもは別として、子供のころに受けた恩恵があるから、あれはそこまで否定的にはなれないんだけど」
 プレゼントを買ってもらったりだとか、ちょっと夕飯が豪勢になったりだとかね。
 それを聞いた霧が、イキイキとして話し出す。
「ほら、やっぱそうじゃん。自分が関われたら割とオーケーってことでしょ?」
「むぐっ……」
 地味に論破された気分になって、私は思わず口をつぐむ。
「ま、虹華はそんなことだろうと思ってたよ……」
 言いながら、ごそごそと霧は鞄を漁り始める。
「……? 何探してんの」
「えっとね……お、あったあった。これこれ」
 取り出したのは、紙袋だった。ふくらみから察するに、中には何かが入っているようだけど……?
「はい、これあげる。中にお菓子入ってるから」
「お菓子ぃ? 私、別にお化けじゃないんだけど?」
 ハロウィンでは切っても切れない有名な言葉だ。
お化けに仮装した子供たちが、村の家々を回って、こういうのだ。『トリック・オア・トリート』――お菓子をくれなきゃイタズラするぞ、と。
「それとも私にさっさと消えろっていう遠まわしな意思表示?」
「ちーがうって。この先お化けに遭遇するかもしれないからさ」
「あぁん……?」
 住宅街の子供連中が、お化けになってあちこちを回っているのだろうか。なんで見知らぬ他人の家の子にまでお菓子をあげなきゃならんのだ……と私は思ったが、にまにまとしている霧の表情からは彼女の真意は読み取れなかった。
 その後は一体何があるんだとある種警戒しながらも、拍子抜けするほどに何もなく集会所であるアパートにたどり着いた。
 本来、今日には何も期待していなかったけれど、霧が意味深なことを言うから、不覚にも何かがあるんじゃないかと少し期待してしまっていた。
 ……ま、ハロウィンだろうが所詮こんなもんよね、と、何の気なしに集会所のドアを開いた、その時だった。
「あ、虹華さん! お疲れ様です!」
「……ゆ、夕くん? 何その恰好?」
 思わず、訊ねてしまった――私を出迎えた夕くんは高校の制服らしきワイシャツとスラックスの上に、金色の刺繍が施されたマントを羽織り、頭には日本のものではない、西洋のカボチャをくりぬいて作った被り物をしている。
 これはかの有名な――
「は、今日はハロウィンなので、ジャック・オー・ランタンの仮装をしてみました! えへへ、怖いですか?」
 カボチャの口から可愛らしい笑顔を覗かせる夕くん。やだなにこれ、まるっきり子供の仮装じゃない。超可愛いんですけど。私は動揺を隠せないままに訊ねる。
「い、いや……何の仮装かは分かるけど、なんで?」
「えっとですね、実は先日白砂さんからお達しがありまして。虹華さんがハロウィンにあまりに否定的だからいっそ楽しませてあげようと。今日はみんなお化けの仮装をしようって話になってるんですよ。虹華さんの分もありますよ!」
「貴様の仕業か霧ぃーっ!」
「ふふん……とはいえ、どうよ、虹華? おかげさまで小野木くんのかわいい恰好も拝めたでしょ?」
「ぐぬっ……」
 したり顔の親友に、しかし返す言葉も見つからない。確かにこれはいいものだけれど――だけれど! 私は! ハロウィンの馬鹿騒ぎ否定派として、こんなことで屈したりなんかしない……っ!
「……おっと、夕くん、何かを忘れちゃいないかな?」
 ぱちり、と霧が夕くんに目配せ。
「あっ、そうでしたね。では――」
 にこりと夕くんは微笑み、私の近くへやってきて――

「虹華さん、トリック・オア・トリート!」
 
 弾けるような笑顔で、お菓子かイタズラの二択を迫ってきた。
 ……こ、こんなの。
 こんなので、私……っ!
 私は、霧にもらったお菓子入りの紙袋を取り出して、叫んだ。

「とっ、トリックアンドトリートォオ! (お菓子あげるからイタズラさせてぇえ!)」

「うわわわわぁああっ!?」
 ――こうして私は、霧の策略通り、見事にハロウィン堕ちしたのだった。
 ちなみに、この時のことを、後に霧は語る。
「あの時の虹華、血走った眼といいよだれといい、仮装もしてないのに誰よりお化けだったよ」
 やかましいわ。

                (おしまい)
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by akr-hgrs | 2017-10-31 09:35 | Comments(0)

物書きの蝉、もとい物書きの日暮晶が綴る、雑な日記のようなもの(予定) ご連絡等ございましたら q65e3r@hotmail.co.jp までどうぞ
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