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鳴かない蝉のそのヒグラシ


物書きの蝉、もとい物書きの日暮晶が綴る、雑な日記のようなもの(予定) ご連絡等ございましたら q65e3r@hotmail.co.jp までどうぞ
by akr-hgrs
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とあるポケモンの悲劇 2

「参ったな……」
 ――手持ち仲間のヤトウモリ(♂)が、進化できないということを知った日の夜。
 トレーナーの最初のパートナーであるジュナイパー(♂)は、ぽつりと呟いた。
 視線の先には、一人きのみを抱えてかじっているヤトウモリの姿がある。
「うぃ~、ひっく……ちきしょうめ……」
「……何も、自分から苦手な味のフィラの実を食べなくても……」
「ひかえめな性格のあいつでも、混乱しなきゃやってらんない気分なんだろうさ」
 ジュナイパーの隣で、バタフリー(♀)とハリテヤマ(♀)も、ぐれている仲間を遠巻きに見て言いあう。
 ぽりぽりとポケマメをつまみながらフィラの実をかじるヤトウモリの姿は、ヤケ酒で飲んだくれているおっさんの風格が漂っていた。
「……何か声を掛けてやりたいが……」
「なんて声をかけてやりゃあいいんだろうね……」
「なにせボクたち、全員進化しちゃってますもんね……」
 ふぅむ……と、三匹の間に重い沈黙が立ち込めた、そのとき。
「ケッ、メンドくせェ。一発発破かけてくりゃぁどうとでもなんだろ」
 心底どうでもよさそうに吐き捨てて、ヤトウモリへ近づいて行ったのは、ルガルガン(♂)だった。
「あっ、バカ、ちょっと待てお前」
 ジュナイパーの制止も聞かずに、ルガルガンはすたこらとヤトウモリへと近づいていく。
「オイオイザマぁねぇなヤトウモリよぉ! 進化できねェぐらいでずいぶんしみったれてんじゃねぇか、おォ?」
 バカ野郎、と三匹全員が思った。本気でヤトウモリを馬鹿にしているわけではない。それは分かっているが、今のヤトウモリにそのちょうはつはマズい。
「……あァン?」
 混乱特有の据わった目で、地雷を踏み抜かれたヤトウモリがルガルガンをねめつける。
「……オウオウ、いい目で睨んでくれるじゃねェか。やろうってのか? テメェにオレが倒せると思ってんのか? オレの方が強いに決まってんだろうが。それとも、進化もしてないテメェの方が強いってのかぁ?」
 ヤトウモリの方から、カチーン、と聞こえた気がした。
「……そうでしょうねぇ、タイプ相性はそっちのほぉが有利なうえに進化してんれすもんねぇ」
 しゃくり、とフィラの実を一つかじって、ぶはぁーっ、と毒ガス混じりのため息をつく。
「進化もしてないあっしに向かって、ルガルガンのアニさんもずいぶんイイこと言ってくれるじゃねぇですかい」
 ひっく、と一つしゃっくりをして、その短い手でルガルガンのたてがみを掴む。あれっ、何かしくじった? と今更ながらにルガルガンが顔を引きつらせる。

「……先達だからなのか進化してんだぁらか知らねぇスけどねぇ、あんまり刺激すっとそのタテガミ燃やしてカエンジシにすんぞ犬公」

 そして解放されたルガルガンが、青ざめた顔で三匹の下へ戻ってきて一言。
「……なんかめっちゃキレられた……」
「言わんこっちゃない……あんたバカなんだから余計なこと言ってんじゃないよ」
「ボクらが声をかけあぐねてた理由聞いてましたよね? バカなんですか?」
「俺止めたよな、バカ野郎」
「バカバカバカバカ言わないでくれよ! オレはオレで良かれと思って!」
「地雷を踏み抜いたのか。まさに発破だな」
「何もしないほうがマシじゃないですか」
「あんたちょっとしばらく黙ってな」
「うぐっ……ぐぉおおおお、手持ちの中でのオレいじめが酷いぜご主人よぉーっ! ぐふぁっ」
 きらりと涙をこぼした負け犬は、とおぼえしながらトレーナーの姿を探して走り去っていった――と思いきや。
「あれ、ルガルガンさん倒れましたよ?」
「なんかピクピク痙攣してんだけど……あぁ、あれかい。もしかしてヤトウモリのため息間近で嗅いじゃったから、毒回っちまったのかね。どうする?」
「放っとくわけにも行かんけど、モモンの実投げとけばいいだろ。そーら」
 ジュナイパーが見事なコントロールでルガルガンの口にモモンの実を放り込んだあと。
「……そういや、ご主人はどこにいったんだい?」
「あまりに気まずいから今日は離れた場所で寝るって言ってたぞ。ヤトウモリの様子だけ見といてくれって」
「ボクらに丸投げですか。無責任ですね……といいたいところですけど、今日は仕方ないですかね」
「あんた、時々しれっとキツいね……でも、実際どうすんだい? あのまま放っとくと、ヤトウモリの奴朝までフィラの実かじってるよ」
「明日まで混乱しっぱなしだと色々支障が出るが……でも、俺たちの中であいつに話を聞いてもらえそうな奴って……」
「――だったら、ワシに任せェ」
 響いたのは、重く低い、声。
「ワシの話なら、少しは耳を傾けてくれよォな」
「――そうか、お前なら……!」

「――のォ、ヤトウモリよ。ちょいとえェか」
 その声に、フィラの実をかじったヤトウモリが振り向く。
 そこにいたのは、紫色とオレンジ色の対象的な色合いが特徴の、ごつごつした体を持つポケモン。
「……ガントルのアニさん……あっしに、わざわざ何用で?」                   (了)



というわけで、うっかり続いた「とあるポケモンの悲劇」。
ウチのメンバー勢揃いです。なぜかバタフリーがボクっ娘キャラになってるのはポケスペのイエローの影響でしょうか。不思議。あとなぜかルガルガンが馬鹿になってしまった。なぜだ。
ゲーム自体は色々あってあんまり進んでないんですが、でも色々楽しんでます。
この悲劇SSはもうちょっとだけ続くんじゃよ。誰に需要があるのか分かりませんが、好き放題やってます。

それはそれとして、朝目が覚めたら一面真っ白になってて素直に驚きました。昼には雪溶けてましたけどね。

ではでは、本日はこのあたりでー。
 
 
 

 

by akr-hgrs | 2016-12-15 21:49 | Comments(0)
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