キラーハウス狂騒曲 第43話 黒原虹華のエール

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というわけで、毎週火曜日、キラーハウスの更新です。
……なんとかなったか……!

というのもですね、実はこないだの土曜日から派手に体調を崩していまして。久しぶりに軽く死に目を見ました。
今日どうにか、辛うじて復調と呼べる段階まで持ってこれたので、ギリギリこいつを仕上げて更新できたということです。
ちなみに12月に入ってからは何気に初の更新ですね。
もう引くほど……というか風邪を引くほど寒いです! 皆さんマジで体調管理お気をつけて。
怖いのはインフルだけじゃありませんよ!

ところで今回のお話ですが、まさかの指名を受けた夕と、それに対する虹華のお話ですね。
師弟コンビがなんかいい話風なことしてる気がします。

雑なあらすじで恐縮ですが、以下Moreより本編開始。
お楽しみいただければ幸いです。










「ヘッドが担当してるパートを描くのは、夕くんの方がいいと思う」
 私の言葉に、夕くんの目が点になって――直後、いやいやいや、とぶんぶん片手を振って否定する。
「ヘッドの代わりなんて僕には荷が重いですよ! なんでいきなりそんなことを……」
「理由が訊きたいなら言ってあげるけど?」
 私は夕くんから視線を外さずに、滔々と述べる。
「まず、単純に絵を描くスピードの問題。ときわさんはまだ担当箇所が終わってないし、仮にそれを終わらせてからヘッドの担当箇所となると色々と無理が出ると思う」
「あ~、それは無理だね。わたしのやってるとこは余裕をもって終わらせるペースでやってたけど、ここにヘッドの……しかも7、8割方手がついてない原稿ってなると、まず間に合わないね~」
「うっ……」
 ときわさんの言葉に、夕くんが言葉を詰まらせる。
「もう一つは、絵柄の問題かな。上手い下手で言えばたしかにときわさんの方が上だとは思うんだけど、ヘッドの絵柄に似ているかっていうと、やっぱちょっとズレてるんだよね」
 ときわさんの絵は、少女漫画というよりは少年漫画っぽさを持ちつつも、女性的な線の細さが目立つ。それによって描かれるイラストや漫画は綺麗だけれど、ヘッドが担当しているパートに合うかと言われると、少々首を傾げざるを得ない。
その点、夕くんの絵柄はヘッドに少し似ている。おそらく、このサークルへ来た夕くんが絵の練習をするにあたって、ヘッドの描き方を参考にすることが多かったからだろう。ヘッドが手をつけた部分の続きを描いても、違和感は少ないはずだ。
「そうだね~。虹ちゃんに先に言われちゃったけど、わたしもヘッドのとこは小野木くんが描くべきだと思うよ~」
「は、灰森さんまで……」
「ま~、一人でやれなんて言わないよ。わたしも自分のとこはできるだけ早く終わらせて、背景なりなんなり手伝うからさ~。でも、キャラは小野木くんが頑張ってね?」
「俺からも頼む、夕――この通りだ」
 ヘッドが胡坐をかいたまま、左の拳を床に着けて頭を下げた。
「へ、ヘッド!?」
「俺のミスでお前に負担を掛けることにはなっちまうが――それでも俺は、あいつらに勝ちたいんだ」
 あいつら――輪堂天音率いる同人サークル、『シャイニーリング』。
「大丈夫だ、お前なら十分に務まる。消去法で頼んでるわけじゃない、お前の絵を見てきた俺だからそう言える。だから、やってくれ」
「ヘッド……」
 夕くんの目の色が、少し変わったような気がした。
 怯えや遠慮の瞳から、覚悟を決めた瞳へと。
「――わ、かりました」
 みんなの視線を受けて、夕くんが、ゆっくりと頷く。
「至らない僕ではありますけど……できる限り、全力で……ヘッドの担当箇所、頑張ります!」
「よく言った、夕!」
 大柄な体に満面の笑みを浮かべて、ヘッドが夕くんの肩を叩いた。
「……なんですか、ときわさん?」
「いやぁ、こういうときこそ男らしいって言ってあげるべきじゃないのかな~、と思ってさ」
 私の肩に顎を乗せたときわさんがそんなことを言うので、小声で返した。
「この後、ちゃんと言ってあげますよ」
 ――苦笑を浮かべる夕くんの、震える手をじっと見ながら。

 その日の活動終了後。
「男らしかったじゃない、夕くん」
「そ、そうですか……えへへ、ちょっとうれしいです」
 夕くんを近場のファミレスへ誘って、そんな風に話を切り出した。
 適当なスイーツとドリンクバーで取ってきたホットドリンクを口にしながら、照れ笑いを浮かべる夕くんへ私は続ける。
「サークルの存亡が自分の肩に乗せられてるプレッシャーに耐えきって、よくあんな啖呵を切れたもんだと、私は本当に思ってるから」
「う……」
 パフェをつつきかけていた夕くんの手が止まり、バツが悪そうな上目遣いで私を見る。
「……プレッシャー感じてるって、バレてました?」
「男だろうが女だろうが、あの状況なら感じて普通。しかもあれだけ手を震えさせてたらねえ」
「あはは……お恥ずかしい」
「何が恥ずかしいもんよ。男ならその程度は強がらないと可愛げがないわ」
「か、可愛げですか」
「……なに? その表情」
 なにやら口をもにょもにょとさせて、喜んでいるんだか悲しんでいるんだかよくわからない顔をしていた。
「いえ、その……虹華さんに褒められたのは嬉しいんですけど、強がってる姿を可愛げがあると評されると、子ども扱いっぽいなぁと……」
「子ども扱い? いやいや、どっちかっていうとこう、母性本能をくすぐられるっていう方が正しいかな」
「母性本能って……やっぱり子供扱いじゃないですかぁ」
 そういう意味じゃないんだけど……と言おうと思ったけれど、さすがにそれを言うと告白めいたことまで言わなきゃいけなくなるので、私は微笑を浮かべて言う。
「まぁ、同人誌の売り上げに関しては、『シャイニーリング』に負けたところで誰も夕くんのせいなんて思わないから安心しなさい。特に今回のは、どっちかっていうとヘマやったヘッドが悪いから」
「あはは……中峯さんにも同じこと言われました」
「じゃあ私からはもう一つ言っておくわ。もしも負けた時、誰も責めないんだとしても、きっと夕くんは自分で自分を責めるでしょう?」
「…………、……そう、ですね。きっと」
 視線を斜め下に流して、夕くんは認める。
 たとえ周りが許しても、自分がそれを許せない。夕くんはそういうタイプだ。
「だったら、向こうに勝てるぐらい気合の入った同人誌を作ればいいじゃない」
「……!」
「勝っちゃえば、それは夕くんにとって何よりも誇らしい勝利になる。負ければ一生呪いを背負うことになる。まさしく一か八かの大勝負――なんて言ったら、さすがに大げさかもしんないけどさ」
 ぴっ、と夕くんの額に人差し指を当てて、私は笑う。
「そういうの、超男らしいじゃない? 限界の二つや三つは飛び越えて、勝ちを狙いに行くのもさ」
「……気軽に言いますね」
 夕くんもまた、笑う。
「こう言うことは気軽に言うけど、頑張れ、なんて他人事みたいなことは言わないから安心して。協力できることは少ないと思うけど、私に手伝えそうなことがあったら何でも言ってくれればいいし――それに」
 テーブルの脇に置いてある伝票をぴっと抜き取る。
「――今日は私の奢りにしとくよ? やっすいエールだけどね」
「……敵わないなぁ、虹華さんの男らしさには」
 降参したように、両手を挙げて夕くんが苦笑する。
「そんな格好いい応援されたら、頑張らなきゃいけなくなっちゃうじゃないですか」
「頑張ってもらうために、こうやって応援してんの。尻は叩いてあげるから、ちゃんと最後まで突っ走ってよ?」
「はい!」
 元気よく返事する夕くんの目には。
 やる気の炎が、メラメラと燃え盛っていた。
 ……しかし、男らしさを適当に焚きつけたはいいものの、精神に外見が引っ張られなければいいんだけれど、と、会計をしながらちょっと不安になった。

                       (続く)
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by akr-hgrs | 2017-12-05 17:52 | Comments(0)

物書きの蝉、もとい物書きの日暮晶が綴る、雑な日記のようなもの(予定)
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