鳴かない蝉のそのヒグラシ |
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連休明けでこんばんは、今週も勝手に更新キラーハウスのお時間です。 ときわさんピンチというか、ときわさんヒロイン回の中編。書いてみると意外と長くなってしまったこのお話。まさか三分割することになるとは……。 プロット会議から数えると、ぴたり四週。起承転結感あって好きです。 ただ今回はちょっと短めかもしれないですね。その分次回がちょっと長めになってたりします。 ときわさんがヒロインなら、そのピンチを救うヒーローはもちろん……。 さておき、最近行き帰りの道で彼岸花を見ることが結構多いです。毎年毎年この時期に咲くあの花を見て、かつてウチの母親なんかは「気持ち悪い」と言っていたので、いやいや、大体の花は決まった時期に咲くだろう……と当時は突っ込んだものですが、ほとんど全部の彼岸花が、同時期に咲いては枯れるというのは確かに、なかなかどうして不気味なものを感じますね。桜だってもうちょっとバラけますもんね。 あとどうでもいいけど自分の誕生花が彼岸花です。ちょっぴり不吉感あって嫌いじゃないです。 さて、では以下Moreより本編開始。 お楽しみいただければ幸いです。 「あー……非常に申し訳ないっす」 「……分かれば構わん」 ヘッドの発言で空気が死んでから数分後。 空気を読まないことで定評のあるヘッドとはいえ、さすがにやらかした自覚はあるらしい。使い慣れてない感じ丸出しの敬語で、ときわさんの父親、樹さんに謝罪した。 「まあそれはそれとして」 ヘッドが仕切りなおす。 「同人サークル『キラーハウス』のヘッドをやってます、大井手来斗ってモンです」 「灰森ときわの父、灰森樹だ」 「じゃあ、樹さん。最初に言わせてもらいますけど」 未だかつて見たことがないほどの覚悟を秘めた瞳で、ヘッドは樹さんを見据える。 「娘さんにゃあお世話になってます」 わたしは力が抜けて体勢を崩す。それは今言うことか? 「絵は綺麗だし、仕事も早い。どんな無茶振っても、大体きっちり仕上げてくれる。何より、イラスト描くのが好きなんだなってのは伝わってくんのがいいんすよ」 だからこそ、と言葉を区切って、ヘッドははっきりと意見を述べた。 「灰森をサークルから抜けさせるつもりはないっすよ。自分の意志ならともかく、親の意志で好きなことをやめさせられるなんてあんまりだ」 …………っ!? ヘッドが、まともなことを言ってる……!? 私たち全員がぎょっとしていると、居心地悪そうにヘッドが首を掻く。 「……なんだよお前ら、俺がこういうこと言うのがそんなにおかしいか?」 「いやおかしいっていうか……ああでも、回りくどいこと言うタイプでもないか、ヘッドは」 「黒原、お前いま俺のことしれっとバカにしなかったか?」 「ちょっとヘッド~、本人がいる前でそんなこと言わないでくれる~? 仕事を評価されて悪い気はしないけどさ、わたし、地味に公開処刑喰らった気分なんだけど~」 「? こういうのって本人に伝わらないと意味ねえだろ?」 「そ~だけどさ~」 ときわさんは珍しく照れた様子で、ぱたぱたと顔を仰いでいる。 「ヘッド……男らしいです!」 「お? なんだよ夕、照れるなぁ」 「…………」 ぐぎぎ、と内心ほぞを噛む。弟子が他の人間に、男らしさの面で尊敬の念を贈るなんて……悔しい! 相手がヘッドだと思うと余計に! 「……ん?」 さっきから一言も発してない霧の方を見ると、なんかぽわぽわしてる。ヘッドの男前なシーンに直面して変な妄想にでも入ったか、トリップしているか。いずれにせよ霧の将来が不安だった。 というか、たった一言でメンバーの半分が落とされたとか……改めてヘッドはヤバいな、と思う。ヤバさを感じる部分が違う気もするが。『シャイニーリング』の輪堂さんも、ヘッドのこういう部分に触れて好きになってしまったのかもしれない。 私は好みが違うので別段ヘッドに傾倒することはないのだが。中峯さんを好きだというときわさんも、どちらかと言えばこっち寄りだろう。 「――勘違いしないでほしいのだが」 そんなどことなく『ヘッドかっこいい!』的な空気を突き破ったのは、樹さんの、どこか呆れたような声だった。 「私は何も、ときわにここを抜けさせるために来たのではない」 「えっ……そうなんすか?」 素っ頓狂な声を上げたヘッドだが、声を上げないだけで、私も霧も夕くんも、娘であるときわさんですら、樹さんの発言に驚きを隠せない。 「……てっきり即日脱退っていう話になるものだと思ってたけど」 「サークルを抜けろとまでいう気は元々ない。大学の単位もちゃんと取っている以上、お前が何のサークルに入ろうとお前の自由だ。そこに口を出す気はない」 ときわさんの疑問の声に、樹さんは淡々と答える。 「私が気に食わないのは黙ってイラストレーターを目指していることだ――反発心からくるものだろうが、ときわ、お前私たちを説得しようともしなかっただろう?」 「……言ったところで聞く耳持ったの? 誰の日頃の行いだと思ってんのさ」 「聞く耳を持たない相手を説得するのは、お前の義務だろう。なぜ私が反発しているのか、その理由も言わねば分からんか?」 「……不安定な職業だからじゃないの?」 「違う。そんな理由で私は反対などしない」 ばっさりと、樹さんはときわさんの推測を力強く切って捨てた。 「私が、イラストレーターという職業についてよく知らないからだ」 「…………」 ここで初めて、ときわさんが黙りこくった。意表を突かれたのかもしれない。 「一体どんな仕事があるのか。どれだけの収入が入るのか。勤務時間は? 休みは? 環境は? ――その手の仕事にまるで縁がなかった私は、何も知らないんだ。お前はそれを説明するべきだった。だというのにお前は不安定な職業だから認めないんだなどとばかり言う。おかげでイラストレーターという職業は、私の中ではすっかり『不安定な職業』でしかなくなってしまった」 「…………」 「説明を、調べることを、怠ったお前の落ち度だ。故に私はこう言わせてもらう。サークル活動ならば自由にすればいい。だが職業としてイラストレーターになることは許さん」 ぴしゃりと言い放った樹さんの言葉で、室内が静まり返る。ときわさんは無表情だけれど、どことなく悔しそうにも見える。夕くんはおろおろとときわさんと樹さんを交互に見ているし、霧は金魚のように口をぱくぱくさせて、何かを言いかけては飲み込んでいる。一方ヘッドは腕を組んで目を瞑り、困ったように眉間に皺を寄せて――と思ったら、かくんと頭が落ちた。え、あれ寝てんの!? この状況で寝てんのあの人!? 信じられねえ今すぐ叩き起こしてやろうかと思ったところで、樹さんが立ち上がる。 「これ以上ここにいても無駄なようだな。ともかく、私の言いたいことは伝え終えた。私はこれで帰――」 「――ちょっと待ったぁ!」 踵を返した樹さんの目の前で、ドアが勢いよく開かれる。 「ぜぇー……ぜぇー……ま、間に合ったか……! ときわは、まだ連れてかれてないな!?」 そこにいたのは、キラーハウス最後の一人。 息を切らせて汗だくの、中峯隼太郎さんがやってきた。 (続く)
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| 2017-09-19 18:18
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